居酒屋チェーンを中心とする主力の外食事業の売上高がピーク時の割まで落ち込み、平成年月期の
連結決算は上場以来初の最終赤字に沈んだ。今期は安価な大衆店から高収益の専門店業態への転換に本腰を入れる計画だが、
一方で、サービス業の「要」である人材の確保難が行く手に影を落とす。業績を回復軌道に乗せるためには、
デフレ環境下で成功した事業モデルから脱却するだけでなく、従業員の労働環境や「ブラック」の評価が根付いた
企業イメージの改善も急務だ。
「日時間死ぬまで働け」という表現を改めた。
ワタミは今月日、ホームページ上にこうした「お知らせ」を掲載し、社員人余りに配布している
「グループ理念集」の改訂を明らかにした。理念集は創業者・渡辺美樹氏のメッセージをまとめた内部文書で、
その激しい文言が、社員に過酷な労働を強いるブラック企業の証左だとみられてきた。
同社は「言葉が一人歩きし、誤解された」広報と釈明しつつも、批判が高まる発端となった年前の
過労自殺事件にふれ「ご遺族の心情を察し、表現は慎重であるべきだった」と、改訂理由を説明する。
「長時間労働の慢性化」
「勤務時間の不適正管理」
ワタミの労働環境をめぐっては、昨年設置した外部有識者委員会の調査報告書にも、
その過酷さを厳しく指弾する言葉が並んだ。
これを受け同社は月、運営する居酒屋の約割に上る店舗を今年度中に閉鎖する苦渋の決断に踏み切った。
月以降店舗余りを閉じ、社員の別店舗への再配置を進めている。
従来は店舗平均人と少なかった社員数は今年度末に同人まで増え、一人当たりの負担が
軽くなるという。店長ポストが減ることで、社員のモチベーション低下という副作用も懸念されるが、
桑原豊社長は「今年度の重点目標は、まず第一に労働環境の改善だ」と決意を語る。
雇用環境が好転する中、人材確保の上で、働く側から「選ばれる」取り組みも重要性を増してきた。
今春のワタミの新卒入社人数は人と、当初予定のわずか半数止まり。
景気回復に伴って月の有効求人倍率は倍まで改善し、外食や小売り各社で広く人手不足が生じている
ことは事実だが、同社の採用難には低下した企業イメージも影響したようだ。>>2に続く
http://news.livedoor.com/article/detail/8889451/
「フライデーズ」のアルバイト募集で、人の採用枠に約人もの応募が殺到したのだ。
「若者向けの新鮮なイメージが『働きたい』という人気につながっている。残念ながら、同条件でも居酒屋
『和民』の募集では人くらいしか集まらない」。担当者はそう打ち明ける。
このためワタミは人材確保に向け、転勤がない「エリア限定社員」の福利厚生を充実させるなど、
雇用条件の改善にも取り組む。
外食産業に詳しい野村証券の繁村京一郎シニアアナリストは「『ブラック』の悪評は払拭に時間がかかり、
経営上の大きなリスクになる」と、地道な改善の必要性を指摘する。
コストを抑えて手頃な価格の酒食を提供し、店舗網の拡大へと突き進んできたワタミ。
そうした過去の戦略と決別して雇用環境を改善した先に、どんな再成長の青写真を描くのか。
カギとなるのは、「総合居酒屋から専門店への転換」だ。
桑原社長は「総合居酒屋の価格の安心感とブランド知名度を武器にした成長戦略は、すでに曲がり角を迎えた」と分析。
今後は専門店の比率を高め、店舗当たりの収益力を最大化していく戦略を基本にすえる。
同社の居酒屋の既存店売上高をみると、全店舗の割を占める「和民」と「わたみん家」で前年実績を割り込む
低迷が目立つ一方、炭火焼き店「炭旬」やワインバル「」といった客単価の比較的高い新業態は、
好調なプラス成長を続けている。>>3に続く
駅ビルや商業施設への出店要請が相次いでいる。初めて外部コンサルタント会社と共同で店舗開発した
「炉ばたや 銀政」銀座は月の開店以降、女性客が約半数に上り、客単価も円弱と、
円前後の「和民」と比べ高い水準を維持している。
今後も総合居酒屋のような数百店規模の展開は前提とせず、毎年新たに業態を開発、平成年には
全店のうち割まで比率を高める計画だ。
居酒屋の市場規模は平成年の約兆億円をピークに減少が続き、年には兆円を割り込んだ。
いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主任研究員は「店での飲酒機会が減る中、『せっかく行くならいい店に』
という志向が高まっている。『デフレ型成長モデル』からの素早い転換が必要だ」と指摘する。
「ワタミ創業の原点に立ち返り、ゼロからの再出発を図りたい」と誓う桑原社長の
手腕が注目される。