2015.06.25
最後に沖縄県・尖閣諸島の周辺海域での漁業活動を行ってから、この8月で丸1年になる。
2010年9月の中国漁船衝突事件以降、政府が中国との摩擦を恐れて弱腰なので、
ならば「国民自身が実効支配を体現するしかない」と、私たち「頑張れ日本!
全国行動委員会」(幹事長・水島総氏)は、石垣島の漁師らとともに何度も
漁業活動を行ってきた。
私も15回にわたって尖閣海域を訪れたが、当初は島すれすれまで肉薄できたものが、
12年9月の国有化以降、「1カイリ(1852メートル)制限」が出されて、
近づこうとすると海上保安庁に阻まれるようになった。そして、ついに昨年、
出港さえ認められなくなってしまった。
国としては、厄介払いできたと胸をなで下ろしているのだろうが、それで尖閣の実態はどうなのか。
自国の漁船を締め出しておきながら、月に3度のペースで中国艦船による領海侵犯は
続いている。もはや、それも完全に常態化し、ニュースにすらほとんどならない。
《尖閣周辺の領海外側にある接続水域で23日、中国海警局の船3隻が航行しているのを、
海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは21日連続》
政府は「平穏かつ安定的な維持管理」を名目に日本人が近づくことを認めていないが、
日本人が近づかないことは本当に尖閣の「平穏かつ安定的な維持」につながっているのだろうか。
ここで皆さんに、ぜひ知っていただきたいことがある。尖閣の自然環境問題だ。
民間政治団体が1978年、実効支配の証とすべく魚釣島に灯台を建てた。
その保守管理のために島を訪れる際の食糧として持ち込まれた1対のヤギが野生化、
大繁殖して、今では数百匹に上っている。わずか3・8平方キロメートルしかない島は、
ヤギの増殖とともに下草が失われ、10代から同海域で漁をしている漁師いわく、
「どんどんハゲてきてるよ」という状況だ。
このまま放置すれば、「実効支配者はヤギ」、なんて冗談みたいなことになりかねない。
絶海の孤島である尖閣諸島は「センカクモグラ」「センカクサワガニ」「センカクツツジ」など、
固有種の宝庫だ。下草が失われるにつれて、それらが絶滅の危機にひんしている。
また、漂着ゴミも大量に堆積している。漂着ゴミは単なる景観の問題だと過小評価されがちだが、
分解したゴミは生き物たちの体内に入り、直接・間接的に命を脅かす。
このようにして、生物多様性が失われていくのを食い止めるには、一日も早い対応が急務だ。
今この瞬間にも、美しく貴重な尖閣の自然は刻々と失われつつある。言うまでもなく、
固有種が絶滅すれば、二度と取り戻すことはできない。美辞麗句を唱えているだけでは
島を守れないことを、ゆめゆめ忘れてはならない。
■葛城奈海(かつらぎ・なみ) キャスター・女優。1970年、東京都生まれ。
東京大学農学部卒業後、女優としてテレビドラマやラジオ、CMなどで活躍。
ライフワークとして自然環境問題に取り組む。武道と農業を通じて国の守りに目覚め、
予備自衛官となる。日本文化チャンネル桜『防人の道』レギュラー出演。林政審議委員。
共著に『国防女子が行く』(ビジネス社)など。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150625/dms1506251140004-n1.htm
馬鹿もここまでくると、、